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訪日観光客として重要な教育旅行客とは?

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訪日観光客の獲得方法のひとつとして、教育旅行客を軽視することはできません。この記事では、教育旅行が訪日観光客の獲得につながる理由とそのための課題について解説します。

■教育旅行とは

教育旅行とは、教育機関で行われる旅行のことをさします。代表的なものとして修学旅行があげられますが、広義的には遠足や校外学習、キャンプなどの行事の他、新入生のオリエンテーション合宿なども含まれることがあります。

日本で修学旅行がはじめて行われたのは明治15年。栃木県のとある中学校が東京へ博覧会の見学に向かったのが日本初の修学旅行と言われています。国内の修学旅行の定番といえば東京、京都、奈良、広島、沖縄あたりですが、近年は国公私立の関係なく海外へ旅行に出かける学校も増えてきました。

同じように、海外の学校でも他国への修学旅行や郊外学習が行われています。たとえば欧州では近隣の諸外国や自国の首都周辺へ修学旅行に行く学校が多く、行き先が学校ごとに違うのはもちろん、学年ごとに異なるのも珍しくないことです。履修する言語によって行き先が決まる学校も存在し、ドイツ語を履修していればドイツへ、スペイン語を学んでいればスペインへ行きます。また、飛行機代が集まらなかった年など、事情によっては修学旅行自体が行われないケースもあります。

アジア圏でも修学旅行を行っている学校は珍しくなく、たとえば韓国の学校では中国や香港への修学旅行が多いです。近年は日本を旅行先に決める学校も増えてきましたが、まだまだ多くの学校が修学旅行先に中国や香港を選択しているようです。

■なぜ教育旅行客を重視するのか

学生を対象とする教育旅行ですが、インバウンド対策を進めるにあたって、重視しなければならない旅行団体のひとつでもあります。

その理由は、将来のリピーターとなり得るのはもちろん、直近でのリピーターとなる可能性も大きいためです。2014年のデータですが、訪日旅行客を年代別に見ると、20~30代、30~40代、40~50代が全体の55%以上を占めていました。これは前回の調査である2009年のデータと多少の増減はありますが、大きな割合で見ると変化していません。

その中でも、20~30代は20%台前半の数値となっています。つまり、訪日観光客のおよそ20%は学校を卒業して数年後に日本を訪れているのです。とくに顕著なのは女性の訪日旅行客で、男女別に見ると男性の2倍近い人数の女性が日本観光を楽しんでいます。

もし修学旅行で日本に良い思い出や印象を持ってもらえれば、この数値をさらにアップさせることができるのではないでしょうか。とくに女性の訪日数を重視し、「女性同士の旅行でも安心して訪れることができる国」としてPRすれば、より多くの観光客を呼び込めるでしょう。

教育旅行のメリットは、引率者がいて大勢で旅行するため、安心感があること。一方で自由に旅行を楽しむ時間が少ないデメリットもあります。限られた時間の中で修学旅行生にもっと日本を知りたい、楽しみたい、と思ってもらえれば、彼らが20代になった頃にリピーターとして個人旅行先に日本を選んでもらえるはずです。

また、彼らが帰国した時に日本の良いイメージを家族や親戚に伝えてくれれば、家族旅行での需要も見込めるなど、相乗効果が期待できる点も魅力です。

■教育旅行者を受けるための課題

教育旅行先に海外を選ぶ理由のひとつとして、他国の学校やその学生との交流を目的としていることがあります。その場合、日本で海外からの教育旅行者を受け入れる学校が必要です。

2013年度の文部科学省発表のデータでは、4,000校以上の国内小中学校、そして高等学校が海外からの教育旅行者との交流を行いました。年々増加傾向にありますが、トラブルも浮き彫りになってきています。

たとえば、受け入れ側の学校との交流で用意される通訳やお茶菓子の費用負担を理解してもらえない、ホームステイ先の確保が難しい、などの問題です。学校同士のスケジュール調整が難しいだけではなく、そもそも両校のスケジュール調整を行う第三者の人員不足も深刻です。

交流受け入れへの理解はできても、実質問題、人員不足やこのようなトラブルの存在により、交渉途中で話自体が流れてしまうこともあります。

これらの中には訪日観光客を受け入れる際の問題とも共通する部分が見られます。訪日観光客全体のトラブル回避やニーズを理解する意味でも、海外からの教育旅行客を対象としたインバウンド対策へ力を入れてみてはいかがでしょうか。

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