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訪日外国人が体験したい「日本人のリアルな生活」インバウンド消費を後押しするテレビコンテンツとは?

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■日本人はどんな生活をしているのか

日本語が話せて来日経験もある外国人に「日本についてどんなことが知りたくて、日本を訪れた際には何をしてみたいですか?」と聞いてみたところ

「日本人がどんな生活をしているかに興味がある。日本を訪れたら普段の日本人と同じことをしてみたいです。いつも食べているものや楽しんでいる場所を知りたい。」

「具体的にはお酒を飲むなら繁華街よりも裏路地へ行ってみたいし、ファッションに関して言えば渋谷よりも下北沢のお店の情報が知りたいです。アニメやマンガ好きは秋葉原もいいけれど、マニアックなグッズが多く取り揃う中野にも興味があるみたいですよ。東京に関して言えば定番観光地の情報は既に溢れているので、郊外へ行ってみたいです」

と応えてくれた。たしかに職場が密集するビジネス街や賑やかな歓楽街よりも少し離れた場所ほうがより身近に日本人のリアルな生活を感じられる。訪日外国人の興味は日本人思っている以上に多様化しているようだ。

 

■外国人が情報を知るきっかけとは

 ファッションに興味がある人が渋谷から下北沢、アニメやマンガのオタクが秋葉原から中野へと行動範囲が広がる流れは想像がつくが、それ以外の定番観光スポットから少し離れたエリアや東京の郊外と言える場所の情報を知るきっかけはなんなのだろうか。

先述の外国人によると

「日本のドラマやバラエティ番組の影響が大きいですね。多くの人が賑わう居酒屋とか商店街が出てくると日本人っぽさというか、よりリアルな日本人の日常を感じます。オシャレなバーやショッピングモールはこちらの都会にもありますから。そういった日本独自の光景はYouTubeなどの動画サイトにアップされているので、外国でも気軽に見ることができます。また日本でいう『2ちゃんねる』と同じような掲示板サイトがあります。『パンテップ(http://pantip.com/)』というのですが、これも情報元になりますね。あとタイ人はフェイスブックなどのSNSに写真や動画を頻繁にアップするので、実際に日本を滞在している人の情報もチェックします。こちらは自慢をしたがる人が多いし、口コミが好きなので話題になればすぐにネットで情報が広まりますよ」

と語った。 

■人気のあるのは庶民的な風景

 たしかに日本ではこのところ庶民的でノスタルジーが感じれるテレビ番組が増えた。例えば、2009年から第一部がスタートしたドラマ『深夜食堂』http://www.meshiya.tv/(TBS系)は深夜0時から翌朝7時頃までの深夜にしか営業しない小さな飯屋が舞台で、マスターと客たちとの交流を描いた作品。2011年に第二部、2014年に第三部が放送され、2016年の第4部ではオンラインストリーミングサービスのNetflix(ネットフリックス)https://www.netflix.com/jp/で全世界190か国へ配信される。

同シリーズは劇場版も2015年と2016年に公開され、国内外で話題となっているコンテンツだ。さらに仕事の合間に立ち寄った店で食事をする様子を描いたドラマ『孤独のグルメ』(テレビ東京系)も2012年のシーズン1を皮切りにシーズン5まで放送。実在する飲食店が舞台となっていることや視聴者の食欲を刺激する演出にも注目が集まっている。

さらに“街ぶら”と呼ばれるバラエティ番組も数多くあり、最近では散歩系や酒飲み系などとジャンル分けもされている。例えばテレビ的でないマイナーな街を取り上げる『モヤモヤさまぁ〜ず2』(テレビ東京系)や下町を散策する『有吉くんの正直さんぽ』(フジテレビ系)などは散歩系と言われ、商店街や地元の人たちとのやりとりするヒーンが多い。一方、酒飲み系は東京近郊を中心に日本各地の酒場を紹介する『吉田類の酒場放浪記』や『おんな酒場放浪記』(どちらもBS-TBS)などが代表格。昭和の名残りが感じられる場面が頻繁に登場し、おじさまたちの支持を集めている。

こうした番組がネットで紹介され、巡り巡って日本の情報を検索している訪日外国人の目に留まっているのだろう。

■若者のテレビ離れ

 ではなぜそうした情緒溢れるドラマやユルくてほっこりするようなバラエティ番組が増えたのだろうか。その背景には若者のテレビ離れが進み、番組視聴者の年齢層が上がったことが挙げられる。シニア世代は都会的なドラマやオシャレなトレンドスポットよりも自分と同じ目線で楽しめる居酒屋や懐かしい商店街の風景、人情モノ、大衆グルメなどに感情移入しやすい。またそうした番組内には笑いを誘うリアルな現場の雰囲気や共感できる部分が随所にある。ロケーションだけで親しみやすさを感じることもできるので、番組の出演者と自分を重ね合わせて観る人も多いのではないだろうか。

 こうした日本のエンタメ界における“シニア層の支持を掘り起こす流れ”はネットを通して「日本人の日常生活を体験したい」という外国人の需要拡大にひと役買っている。訪日客数は伸び続けているので、今後はより一層インバウンドの消費を後押しするだろう。

■消費する場所は定番から地域へ

 訪日外国人の観光スタイルは団体ツアーから個人旅行へとシフトしており、観光庁の調査によると訪日客の6割がリピーター。査証(ビザ)の発給条件の緩和などもあり、今後さらにリピーターが増える公算が大きい。訪日消費をけん引してきた爆買いが落ち着き、1人当たりの買い物額は減少傾向にあると言われているが、消費対象の裾野が広がっている。訪日外国人の需要がモノから体験やサービスなどのコトへ、消費する場所が定番の観光地からそれ以外の地域へと拡大する傾向が加速すれば、さらにインバウンドの恩恵を受けるビジネスも広がっていくと言えるだろう。

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